経営者交代の場面では、その準備が不十分な場合、いざ交代を行ったときに、後継者にとって思いもよらない事態が発生します。今回は、この「後継者が社内で揉めてしまう3つのパターン」について、パスファインダーズ株式会社 代表取締役社長 日沖さんにお話をお伺いしていきます。
後継者になった直後によくあるパターンは、“社長になったので改革しなきゃ”という意気込みから、中途半端に頭でっかちな知識を振り回し、既存のやり方を否定するというものです。従来その会社がやってきた先代のやり方・幹部の言うことを、ことごとく否定してしまうんですね。結果として、あの社長には何を言っても無駄だ、となって意見も出なくなってしまいます。そうすると、会社として意気消沈してしまい、空気も悪くなってしまいますよね。
こういったパターンの解決策として、後継者自身が反省し、自らを変えることが重要です。そのうえで、意見を自由に言える場を作り、その場では意見の拝聴に徹するようにしましょう。社内で意見を出しやすい雰囲気が生まれれば、社風が前向きになりますし、また実際に意見が取り入れられることで、さらに新たなアイデアが生まれるようにもなります。
2つ目のパターンは、先代との違いをみせようとする自負心や対抗心から、思い付きや、議論が未熟なまま、新規事業や急速に伸びている新市場への進出を決めてしまうというものです。それによって、先代・幹部から反対された場合でも、ロジカルに説得しようとするのではなく、感情的に反発したりします。プランの練り直しをせず、強引に推し進めようとすると、ずるずる深みにはまっていき、遂には孤立していってしまいます。
まず、予防策としては、感情的にならずに、論理的に考えて、冷静に議論をすることです。社内だけで冷静に議論することが難しければ、第3者のファシリテータを雇うのも一つの手です。また事後策ですが、既にもつれてしまっている場合も、やはり適切な外部の専門家を雇うのがベストでしょう。弁護士や外部コンサルなど、第3者の目線が入ることで、冷静に議論を進めやすくなり、もつれた糸をときほぐすことができます。
3つ目のパターンは、後継経営者としての自信の無さから、経営判断をずるずる先送りにしたり、ことなかれ的に妥協したり、調べずに曖昧なままにするというものです。そうなると、“新社長って頼りないな”、という評価が定着してしまい、先代や番頭に相談が回ってしまうことがあります。最悪の場合、野心のある幹部が“ここにいてもしょうがないな”と見切りをつけてしまい、顧客と社員の一部をつれて独立してしまうケースもあります。
こういった場合、後継経営者は、自信をつけないといけないですね。まずは本を読むことから始めましょう。経営教科書を体系的に読むことがおすすめです。拾い読み的に読むとつまらないと感じるかもしれませんが、体系的に読めば、経営教科書は情報が網羅されており、経営の理解が進みます。また、人間そのものへの理解も重要です。人物伝や古典の哲学書、名経営者の書いた「私の履歴書」のようなものを中心に読めば、人間はどう考え反応するのか?を理解することができます。更に、ある程度の基礎知識を仕込んだうえで、尊敬できる先輩や同輩の話を聴くことも有効ですよ。
経営者交代の場面で、思いもよらない事態が発生してしまった際は、このような解決策を試してみてはいかがでしょうか。羅針盤俱楽部では先輩・同輩経営者と話ができる機会の提供もしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
【 日沖 博道(ひおき ひろみち)】大手コンサルティング組織にてシニアアドバイザー、統括パートナー、ディレクター等を務め、経営コンサルティングと事業会社経営を経験した後に独立。2012年にパスファインダーズ株式会社を設立。新規事業の開発・推進・見直しを中心としたコンサルティングを提供。